作曲しているとき、ミキシングしてるとき・・必ずと言っていいほど使うコンプレッサー。操作するツマミも多いし、とっつきにくいですよね。なんとなーくいじってもなかなか「いいカンジ」の音にならない!プロの音源のような迫力が出ない!という人も多いと思います。
そこで今回は、DAWソフトを使ったコンプレッサープラグインの基本的な使い方を紹介します。
一見ややこしいアイツも、分かってやればすごーくいいヤツですよ。
コンプレッサーのメリット
1. 小さな音を聴こえやすくする
まずはざっくり復習しておきましょう。コンプレッサーとは、大きな音をギュッ!と圧縮(コンプレス)するもの。
基本的には、大きな音を小さな音に近づけ、音量差を少なくするために使用します。
▼Before | After
その結果何ができるかというと、全体のボリュームを上げることにより、今まで聴こえにくかった小さな音を聴こえやすくすることができます。
▼Before | After
2. 音圧を上げ、迫力を出す
デジタルの世界では、扱うことのできる音量の上限がシビアに決まっています。その上限ラインを超えてしまうと、耳に痛いノイズが発生してしまうのです。ミキシング中だけでなく、録音の時点から気をつけなければなりません。
迫力を出そうと全体の音量を上げようとしても、「曲の中で一番大きな音が、上限に達するスレスレのところまで」しか、音量を上げることができません。そう!そこでコンプレッサーの出番です!
大きな音を圧縮すれば、全体の音量をさらに上げることができます。つまり「迫力」を出すことができるわけですね。
▼Before | After
パラメーターの意味
基本的なコンプレッサーのパラメーター(ツマミ)は、以下のようなものを備えています。ここではDAWソフトProToolsに付属しているプラグインを例にします。それぞれの役割をざっくりと知っておきましょう。
- THRESH
- RATIO
- ATTACK
- RELEASE
- KNEE
- GR
- GAIN
スレッショルド
コンプレッサーが反応する音量レベルを設定します。値を下げていくほど、たくさんの音に反応します。
レシオ
スレッショルドラインを超えている部分の音量をどれだけ圧縮するか、の比率を設定します。
値が高いほど、強力に圧縮されます。
アタックタイム
スレッショルドラインを超えている部分の圧縮を、どれだけ速く始めるかを設定します。
値が速いほど音の立ち上がりから圧縮しはじめ、遅いほど原音のニュアンスが残ります。
リリースタイム
圧縮後、スレッショルドラインを下回った部分に対し、圧縮解除するまでの時間を設定します。
値が速いほど、ラインを下回った直後に圧縮解除され、遅いほど、ゆっくりと圧縮解除していきます。
ニー
スレッショルドラインを超えた「直後」の圧縮のかかり具合を調節します。
値が高いほど自然に、緩やかに圧縮がかかっていき、最低値にすれば機械的に、即座に圧縮されます。
ゲインリダクション
「その瞬間」にどれだけの音量が圧縮されているか、dB(デシベル)単位でリアルタイムに確認できます。
メイクアップゲイン
圧縮により小さくなった音量をどれだけ上げるかを設定します。
各パラメーターの役割を図解するとこのような関係性になっています。↓
パラメーターの意味はなんとなくわかりましたか?・・説明を聞くだけでは理解しきれないでしょう。
後は実際に各パラメーターをいじりながら、音の変化に耳を凝らす習慣を身につけてください!
Tips – 習慣づけたいこと
●リダクションメーターと見比べ、メイクアップゲインで同じ音量だけ上げれば、【今行った処理をしたことで、音にどんな変化があったのか】を確認することができます。
●バイパスボタンを使えば、クリックする度にプラグインの有効化・無効化を切り替えられるので、しっかり音のビフォア・アフターを確認しましょう。
理解度チェック!
パラメーターの中でも、理解が難しいアタックタイムとリリースタイム。でも実は、それらが一番のキモ。使いこなせばかなりの表現力が手に入るのです。・・・というわけでクエスチョン。
- 問題
- 正解
- 解説
- 処理後の波形
- 応用処理
下図のような単音に対して、音量のピークをしっかりおさえたい。かつ、音の余韻はできるだけ残したい。
その場合、アタックタイムとリリースタイムはそれぞれ、どう設定すればよいでしょう?
速めor遅め、で回答してください。
●アタックタイム:速め
●リリースタイム:速め
音の立ち上がりからしっかり圧縮するためにアタックタイムは速めに設定。
余韻はできるだけ圧縮せず、原音のニュアンスを残したいため、リリースタイムは速めに設定します。
最後にメイクアップゲインを上げると・・
これで、「アタック音に隠れて聴こえづらかった余韻」も聴きとりやすくなりますね!
コンプレッサーの種類
コンプレッサープラグインは、その機能や特性、用途によって様々な種類のものが存在します。
思い切ってザックリ、2つに分けると・・
●今回紹介したような、機械的に処理を施す ”ザ・デジタル!” なもの
●実際にハードウェアとして存在するものを参考にエミュレート(再現)されたもの
後者は、「同じ処理をしても、その機器独特の効き方をする」「独特の質感を音に付加する」特徴があります。
そして実機は非常ぉーに、非情ぉーなまでに高価。高級車が買えるほどのものもあります。そして希少価値も相まって、一般的には手に入りにくいものも数知れず。
例えば以下のプラグインたちの実機は、まさにそんなセレブリティーなメンツです。↓
これらのコンプレッサーも、今回紹介したような基本的な使い方は変わりません。ただし、時代背景や存在意義によって独特なツマミが存在したり、逆に少なかったり、全く挙動が違ったりするので、すぐに使いこなすのは難しいかもしれません。
アクが強く、難易度の高いゲームソフトを想像してください。最初はまったく攻略できないけれど、やりこんでいくうちに慣れていきますよね。それと同じように、その機器の特性や操作方法に慣れるまでには、時間がかかるのです。
使い分けがカギ
一概には言えませんが、実機モデルのプラグインは「この機器でなければならないシチュエーション」に利用することが多くなります。つまり機械的に単純処理をしたい場合と、うまく使い分ける必要があるのです。
まずは、デジタルの特性を活かした通常のプラグインで基本的な使い方を身につけ、その上で実機モデルと使い比べていきましょう。次第に、その独特な「違い」や「旨み」を感じ取れてくるはずです。そのときにはきっと・・
魅惑のコンプ・ワールドへ、すっかり入り込んでしまっているはずです。